ロバート・ボン・ヘギーは光と影の魔術師と謳われる。彼がデザインしたコースには光線の織りなす神秘性――光と影が交錯するドラマ――が演出されているためだ。

リゾ-トの概念を変えたホウライ、西那須野

 ロバート・ボン・ヘギー(Robert Von Hagge)は、1930年、米国テキサス州で生まれた。バーデュ大学で土木工学を学んだ後、コース設計家、ディック・ウィルソンに師事。共に“ブルー・モンスター”と称されるフロリダのドラルCCブルーコースをデザイン。リゾートコースの美しさのなかにも、トーナメントを開催できる戦略性を備えた造形は高く評価された。

  日本でヘギーの声望を一気に高めたのは、やはり栃木県にあるホウライCC、西那須野CCの設計においてだろう。600万坪という広大な敷地を持つホウライ牧場の隣接地、千本松と呼ばれる松林を切り開く形で造成された。

 ヘギーは設計依頼があった時のことを次のように語っている。「境界線はあなたが決めてくれといわれ、びっくりしました。結局、まず18ホールをレイアウトして、後から境界線を入れたのです」。厳しい山岳地形が多い日本でのコース設計において、非常に恵まれたケースである。

画像1: ホウライCC

ホウライCC

優れた視覚的主題を表現したい

 そんな好条件の中、ヘギーは存分に腕を揮った結果、それまでの日本のゴルフコースのイメージを根底から覆すコースが出現したのだ。進入路に一歩足を踏み入れた瞬間に、欧米のリゾートコースに行ったような錯覚に陥る。
 フェアウェイ、ティグラウンドは緑色が深いベント芝、バンカーの真っ白い砂、松林が水面に映える広大な池。審美性を成立させるための“記号”が見事に表現されている。

 ヘギーはいう。「ゴルフコースは優れた視覚的主題を表現しなければ意味がない。そのためにまず、その土地に行って朝日と夕陽のチェックをします。そして、太陽のそれぞれの位置からの光線の入り方、角度に細心の注意をする。この光線をイメージして造形をデザインしていくのです」

画像: 西那須野CC

西那須野CC

光と影の魔術師と呼ばれるわけ

 これでヘギーがなぜ光と影の魔術師と呼ばれるわけが少しでも理解できたろう。もちろん設計手法として、最終ホールで西日が正面に来ないこと。4つのパー3がそれぞれ東西南北を向くなどがあるが、ヘギーはそれを踏まえて、光線が織りなす光と影のドラマを演出できるように造形していくのだ。

 ヘギーの設計理念を具体的に語っているので耳を傾けよう。「ゴルフコースには、空の青さ、深緑の林・芝がある。これに真っ白い砂のバンカー、青い水の池の配置がキーポイントになります。だからバンカーはグリーンとのコンビネーション、プレーラインの角度に対応して配置します。そして最も大切なことはプレーヤーにバンカーをよく見せて、ターゲットラインを決めるための情報を提供することです」

 白い砂のバンカーは視覚的にも戦略的にも、ヘギーにとって重要なツールといえるようだ。また多くの日本のコースのように2グリーンではなく、なぜ1グリーンなのか?についても、語っている。「グリーンは最終目標エリアなので、十分なスペースの雄大さ、美しさを持つ創造物でなければならない。2つのグリーンを1つのスペースに押し込もうとするのはプレーヤーの目標をぼかし、スペースとコストの浪費になりかねず、景観上も退屈なコースとなる」

画像2: ホウライCC

ホウライCC

フランスではライダーカップ、パリ五輪の舞台にも

 日本ではホウライ、西那須野を含め11コースを大地に刻んでいるが、中でも河口湖CC(山梨県)、マオイゴルフリゾートもまたリゾートコースとして定評がある(マオイをNo.1と推す日本人設計家もいる)。
 リゾートにはストレスを解消しにきているわけだから、コースのロケーションの美観に酔わせ、14本のクラブをすべて使い切るホール立てにして、単調なプレーの繰り返しになることを避けるなどあげている。

画像: 河口湖CC

河口湖CC

 世界での業績もあげておきたい。母国ではヒューストンにウォールデンレイクコース、米国PGAツアー開催コース、TPCウッドランドがある。
欧州ではフランスとスペインの国境に位置する歴史の古いリゾート、ベアリッツに造成されたセニュースGCの3コースが有名だ。
 またフランス、パリ郊外のリゾート地に造成されたル・ゴルフ・ナショナルでは昨年、フランス初のライダーカップが行われ、ゴルフが盛んになるきっかけをつくった。2024年、オリンピックのゴルフの舞台になることも決定している。

 ロバート・ボン・ヘギーは2010年、惜しまれつつこの世を去った。

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