軽井沢72で父シニアのプランナー&設計意図の跡を継いだ長男のロバート・トレント・ジョーンズJr。日本のコース造成ラッシュの真っただ中、外国人として最多のコース設計を残した。その設計哲学は「リスク&リワード」(危険と報酬)だった。

ゴルフは野外でするチェスゲームだ

 ジョーンズJrはアイビー・リーグのエール大で文学、政治学を学び、さらにスタンフォード大で経済学を専攻した。エール大ではゴルフ部に所属していたが、学生時代は父の跡を継いで設計家になるつもりはなかった。しかし、卒業後、思い直して父の助手となった。そこでは父の薫陶を受けながらも独自の設計手法を築いていった。

 父がスケールの大きいヒロイック・デザイン(英雄型設計)なら、ジョーンズJrは谷や丘などの高低差を使い、自然を活かした設計。
彼の口癖は「ゴルフは野外で行うチェスゲーム。プレーヤーが自分なりの攻略プランを考え、実行してスコアをつくっていく」。
この理念が「リスク&リワード」の設計手法を確立していく。すなわち危険を冒して成功すれば甘美な果実を手にすることができるし、反面、安全ルートも用意する。手堅くそちらも選択できるし、攻略の幅を広げてやることで、スクラッチプレーヤーからサンデーゴルファーまでを包括でき、プレーを愉しむことが出来るというわけだ。

京都はデザイン・アイディアの宝庫

 来日したのは1970年代、父が軽井沢72西コースを設計した後、ジョーンズJrがその跡を引き継いだ。父が築き上げた米国式近代技術(大型リゾート開発など)は引き継ぎながら、その上で大胆にウォーターハザードを配し、1グリーンだからこそ実現出来る審美性を追求した。よく彼が引き合いに出すのは京都・竜安寺石庭だ。岩と砂の庭を大海原や広い世界に喩え、枯山水には日本の美「わびさび」が含羞を秘めて表現されている。京都はデザイン・アイディアの宝庫とまでいっている。ジョーンズJrは美に対して感性豊かで、イメージをふくらませ、デッサンし具現化してレイアウトに取り入れていく。

画像: 軽井沢72 西コース

軽井沢72 西コース

 世界で設計・改造したコースは250以上。日本では22コースと記述するところもあるが、自身が責任を持ってコース造りをしたのは15コースであろう。桂(北海道)、ゴールデンバレー、パインレーク、チェリーヒルズ(兵庫)、鬼の城(岡山)、オークヒルズ、富士カントリー市原(千葉)、スプリングフィールド、瑞陵(岐阜)、那須ハイランド、イーストウッド(栃木)、ザ・カントリー(滋賀)、美浦(茨木)、リージャスクレスト(広島)、キングヒルズ(熊本)の15コース。

 その作風を父ジョーンズSrは次のようにいう。「彼は素材となる土地の命ずるままにコースをデザインするナチュラリストだ。その想像力は私より華麗で周辺の自然環境と調和して融合する」

画像: ロバート・トレント・ジョーンズ・ジュニア 短歌を自作するほど日本の心を理解した親日家だ。

ロバート・トレント・ジョーンズ・ジュニア
短歌を自作するほど日本の心を理解した親日家だ。

存命設計家で全米オープン開催は史上初

 その代表的なのはゴールデンバレーだろう。「あの狭い谷とクリークだけの原風景から、あれだけの流麗なレイアウトは想像出来ない。彼でしか実現できなかった」とはクライアントの弁である。

 ジョーンズJrの名声をさらに高めたのが、2015年、全米オープンを開催したチェンバースベイの設計によってだ。同コースは、以前は砂ほこりの舞う砕石所であった。その岩と石、無機質で放っておかれていた場所を異次元の自然環境に変化させ、価値を逆転させたのだ。遠くの青い海原を背景にして、あるホールには松を1本だけ植え、夕景のなかに浮かび上がらせ、一幅の絵に仕立てた。そこには日本でわびさび精神に学んだジョーンズJr自身の感性が彷彿とする。

 07年にオープンしたチェンバースベイは10年全米アマ、16年全米女子オープン、そして15年の全米オープン開催とつながっていった。同オープンは東部の歴史ある名門コースを中心に開催される。チェンバースベイは西部でしかも新設コース。異例づくしで、さらに設計者が存命のコースで全米オープンが開催されるのは史上初のことであった。

R・T・ジョーンズ Jr.のコースを廻ろう

桂ゴルフ倶楽部
北海道を代表する林間コース。ゆったりと自然の中にデザインされた。広大な練習場でラウンド後にじっくり練習するもよし。
〒059-1365
北海道苫小牧市植苗577-1
TEL 0144-57-5757

富士OGMゴルフクラブ市原コース
フェアウェイは総じて広いが、グリーンに向かうに従ってシビアなショットが求められる、ターゲットゴルフの理念を具現化した戦略的コース。ラグジュアリーなクラブハウスでアフターゴルフも充実。
〒290-0528
千葉県市原市古敷谷権現台1685
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