雨降りの日、ボールが汚れてしまったり、フェースが濡れることでスピン量が減ってしまったり……と、ここで疑問が。ウェッジの溝ははたしてボールのスピンにどれだけの影響を与えているのか、そしてボールが濡れているときスピン量はどのように変化するのだろうか。ギアライターの高梨祥明が、溝がない特注ウェッジを使って実験してみた!

フェースの溝がないとバックスピンはかからない! って、ホント!?

今日は手元にフェースの溝が一本も入っていない“つるつるフェース”ウェッジがあるので、ちょっとした実験をしてみたい。

画像: フェースの溝が一本もない、特注の実験用ウェッジ(写真左)。雨に濡れると、とても危険な打球が出るじゃじゃ馬だ

フェースの溝が一本もない、特注の実験用ウェッジ(写真左)。雨に濡れると、とても危険な打球が出るじゃじゃ馬だ

一般的にはフェースの溝、これの角(カド)が鋭角だとバックスピンがよくかかるといわれている。カドがカバーに食い込んでギュギュっ! とね。そんなイメージがあるけれど、これってホントなのだろうか? 実際に、溝のあり・なしだけでロフトや重量、シャフトや長さは全く同じウェッジを使って、ボールを打ってみた。下がその結果である。

画像: 表1。ボールが濡れていない状態で実験した結果

表1。ボールが濡れていない状態で実験した結果

さすがというか当たり前というか、溝があるウェッジは平均1万1000回転/分のバックスピンがかかっている。まさにギュギュっとスピンが利いている状態だ。では、溝がないウェッジはどうか。これは打っている時にすでに実感できたことだが、フェースに溝がなくても、結構スピンがかかっている印象だ。数字をみても、やはり平均で7300回転/分もバックスピンがかかっており、一般的なグリーンなら止まるだけでなく、落下地点の傾斜次第ではギュっと戻ってきてもおかしくないレートなのだ。

フェースの溝のあり・なしで3700回転/分の差。数字的には大きい感じもするが、見た目や実際の打球結果でいけば、そこまで溝にこだわる必要があるのだろうかと思う。それが実感である。

あ、雨だ! それだけでボールが練習場の天井を直撃の恐怖!

では、次の実験に移ろう。今度は雨の日はどうなる!? ボールを一度バケツの水に浸してから、同じ溝あり・なしウェッジで打ってみた。結果は下の表のとおりである。

画像: 表2。ボールが濡れている状態で実験した結果

表2。ボールが濡れている状態で実験した結果

まずは、溝あり。平均8000回転/分のスピンがきっちり入っていて、飛び方も安定。見た目には若干打ち出しが高く、多少ポッコン気味だが違和感なくアプローチできるレベルだった。

問題は、溝なしウェッジだ。濡れたボールを打った瞬間、あり得ない角度でボールが上がり、練習場の天井(ひさし)をかすめるように飛んでいった。打感はほぼ、ない感じである。3球目、ついにガン! とボールが天井に当たった。データをみると打ち出し角度は54度! スピンは40回転/分しかかかっていない。これは打っていて、相当こわい。ボールがどこにどれくらい飛んでいくのかまったく予想できないからだ。ボールが濡れただけで、フェースに溝がないとゴルフにならなくなってしまう。溝の偉大さを感じた瞬間だ。

かつて、クラブデザイナーの竹林隆光さん(故人)が、こんなことをいっていた。

「バックスピンは、溝のカドでかけるんじゃないですよ。スピンは真っ平らなフェース面とボールが密着することで生まれるのです。そう、摩擦です。フェースを機械でミーリングして平らにし、溝も彫刻ドリルで入れる。そうするとフェースとボールの接触面が増えるんです。普通にプレス型で圧を加えて溝を入れると、せっかく平らに削った面が山型のように盛り上がってしまう。接触面が点になって摩擦が減るんです。証拠に溝がなくても“ドライな状態”なら、きっちりスピンがかかりますよ」

“ドライな状態”、つまり今回の最初の実験である。しかし、これが“ウェットな状態”になると、いきなり悲惨な打球結果になってしまう。これはなぜか? これについても、かつて竹林先生が教えてくれている。

「フェースにある溝は、排水溝の役割なのです。ボールとフェースの間に挟まった芝生や土や水を溝内に格納し、左右に逃がす。そうすることで、ボールとフェースが直接的にコンタクトできる。これによって安定したスピンがかかるのです」

画像: 水、土、芝生。様々な自然物がボールとフェースの間に介在してしまう。それがゴルフのインパクトである。フェースの溝は、それらを内部に格納し両端から逃がす“排水溝”なのだ

水、土、芝生。様々な自然物がボールとフェースの間に介在してしまう。それがゴルフのインパクトである。フェースの溝は、それらを内部に格納し両端から逃がす“排水溝”なのだ

ゴルフのルールでは、確かに溝のカド(エッジ)の鋭さを厳格に規定しているが、もう一つ制限されているのが溝の容積である。つまりは排水溝の大きさ制限。容積を小さくすることでボールとフェースの間に異物が介在しやすくなり、フェアウェイ、ラフ、ベアグランドなど、ライ・コンディションによって打球結果が安定したり不安定になったりする。狙った場所に運べたのかどうか。それが次打の結果に反映されるべきだからである。

ここで梅雨どきゴルフの道具学! のまとめ。

“打つ前には必ずフェースを拭き、なるべくドライな状態で打とう”。

フェースの溝は、異物を逃がす排水機能。そもそも水に濡れて溢れる寸前の排水溝では、フェース面が水浸しになって、ノー・スピンに! これではフェアウェイから打ってもスピンは利きませんよ!

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