40歳を過ぎてからプロテストに合格し、ツアーデビューを果たすなど、プロコーチの枠組みを超えた活動が大きな反響を呼んでいるプロゴルファー・中井学。
そんな中井が自らの波乱万丈のゴルフライフを振り返る連載。今の自分を見つめ直す最終回。

先日、ある収録でこんな質問を受けた。「すごく初歩的な質問で恐縮ですが、プロゴルファーになぜなろうと思ったのですか?」ゴルフのことを聞かれて口籠ることなどほとんどないのだが、「えっ、あっ、そうですね・・・なぜでしょうねぇ・・・」即答ができない上に収録を止める訳にはいかないので、「実は元々野球が大好きで少年野球チームに入って・・・」と話しながら自身の記憶をたどっていくことにした。

「俺、なんでプロゴルファーになったの?」」

左腕に大けがをして野球を断念したあと、剣道をやってみたけどやっぱり左腕が痛くてやめてしまい、何やってもダメだと腐っていたときに父親が「ゴルフでもやらんか」と誘ってくれまして・・・「ヤバい、答えが出てこない・・・」焦る私。「その後一旦ゴルフをやめまして、やめたらもっとやりたくなりまして・・・」飽きてくる司会者(笑)。最後まで答えらしい答えが出ないまま次の質問に。帰りの電車で下車する駅を間違えてしまうほど私は考え込んでしまった。「俺、なんでプロゴルファーになったの?」と。

そこで私はこの自叙伝的な連載を読み返してみることにした。第2回ターニングポイントで、私が学ランを着て試合会場に向かう途中の電車内で「クソガキがゴルフなんかしやがって」と言われたのがトラウマになったと。ゴルフはやってはいけないスポーツなのかと疑問をもってしまったから、プロになろうなんてこの時は微塵も思わなかった。第6回幸運の女神では、ジョーブ博士を紹介してもらう友人の彼女に「プロになりたいけどね、左肘がダメだから」と告白している。この段階で「プロになりたい」と言っているということは、22歳にはプロになる意思はあったと思われる。「22歳になれば少しずつ臆病者になるわ」と歌ったのは谷村新司だが、大胆にもプロになりたいと他人に初めて打ち明けたのはこの瞬間だった。実はこの時の私の精神状況は最悪だったことを覚えている。大学の授業では英語の壁でなかなかうまくいかず、ゴルフ部も学業成績が評定平均値で0・1ポイント足りず部活動停止が決まっていた。そんな中、友人に「プロになりたい」と言っている。ただここでクエスチョンがつく。「プロになりたいけどね、左肘がダメだから」けどねって言い草は「なれるわけないけどね」の「けどね」だ。ということはプロになるのをこの段階で諦めているのではないか?自分のことだが、だんだんイライラしてきた(笑)。

「なんなんだ俺は!」過去を振り返ると怒りがこみ上げてくる。

小学生で左腕に大けがをして以降、大好きだった野球をやめ、自分に打ち勝つ根性をと思って始めた剣道もやめ、海外留学も4年生大学に編入する前にF1ビザを打ち切られ、アメリカでプロになろうとするもグリーンカードが得られず帰国。私の人生は何をやっても達成したことがないという劣等感で支配されているのは間違いない。それだけに皆さんのゴルフにおける劣等感を改善するというティーチングの仕事は天職かもと思ってきた。ただどれだけ多くの方々のゴルフの悩みを解決しても、自分自身の劣等感の改善にはならなかった。

「運だけはいいかもしれない!」

「もっと上手く指導できたのではないのか?」となってしまう。もう病気だ(笑)。でも反面、こうとも思っている。「運だけはいいかもしれない」と。

ジョーブ博士に手術を受けられたのなんて100%運だ。皆さんに指導者として認識していただけたのも、ある編集者の「おまえ面白いな」からゴルフ誌面に登場できた運だ。でも運だ。運でのし上がってきただけでは劣等感はなくならない。やっぱり病気だ(笑)。

どうしてプロになりたかったのか、だんだんはっきりしてきた。全て達成できないまま挫折した学生時代。でもゴルフだけはやめなかった。電車で「クソガキがゴルフなんかしやがって」と言われたときに感じた社会からの拒絶感。でもゴルフが嫌いになれなかった。そうだ、私はゴルフを続けたかったのだ。続ける手段がプロゴルファーになることだったのだ。

連載を通じて導き出せた「ひとつの答え」

連載の執筆を利用してしまい大変恐縮だが、ひとつの答えが導きだせた。

私はゴルフが好きだ。だから続けたかった。どんなに劣等感に支配されようが、ゴルフを続ける事が出来る運からは見放されなかった。ひとりでも多くの方にゴルフを好きになってもらいたい、はじめてほしいと思って行っている活動も、ゴルフで得られたたくさんの幸運の恩返しなのである。

ただ厄介なものが残っている。ずば抜けた劣等感だ(笑)。その劣等感と対峙することにした。トーナメントプロとしてどこまでできるか?

今のところ、劣等感の全戦全勝。まだ勝負は始まったばかり。

必ず勝って皆さんにご報告したいですね。ご愛読ありがとうございました。(文/中井 学)

画像: 中井学(なかい・がく)1972年4月14日生まれ。高校卒業後に渡米し、苦学しつつゴルフの技術を磨き、見識を深めて帰国。ツアープロコーチとして長く活動した後、2015年にプロテスト合格 2016年、東建ホームメイトカップでレギュラーツアーデビューを果たす

中井学(なかい・がく)1972年4月14日生まれ。高校卒業後に渡米し、苦学しつつゴルフの技術を磨き、見識を深めて帰国。ツアープロコーチとして長く活動した後、2015年にプロテスト合格
2016年、東建ホームメイトカップでレギュラーツアーデビューを果たす

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